【読書】受け月/伊集院静
謂わずと知れた大御所である。恥ずかしいことに、私は彼の(かの)作家の作品を読んだことが無かった。そういう存在があまりにも多い。先日お目に掛けた、辻原登先生然り、高樹のぶ子先生然りである。他にも、あれやこれやあるが、まだデビューもしていないので、到底偉そうなことはいえる立場ではないが、書く立場になって、名を成している人はそれなりの作品を書いているのだなと実感した。当たり前だが。
本書は35年以上前の直木賞受賞作である。最初から最後まで、野球をめぐる連絡で張り巡らされた連作の物語で構成されている。少年野球あり、プロを目指していた男の挫折あり、高校野球のロマンあり、そのいずれもが、スケールや背景の違いこそあり、ほろ苦く、かつ爽快な読後感に至る連作である。野球少年ならば、わかる~といいたくなる話の一つや二つは入っているだろう。よくもまあというくらい、見事に描き分けている。
当時野球少年(やってたのはソフトボールだけど)だった私は、三つ子の魂百までというからして、今もそしてこれからも野球に憑りつかれて人生を歩んでいくのだろう。だから、昨年ヤンキースタジアムで田中将大が投げている試合を生で見たときは鳥肌が立ったし、職場で聞こえるハマスタの打撃音や歓声だって悪かろうはずがない。
野球好きにはたまらない一冊である。酒のつまみでもいいし、宵越しの野球談議のお供にしていただくのもいいだろう。