谷中ハチ助のブログ

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【読書】奔馬~豊饒の海②/三島由紀夫

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 三島の遺作となった連作の第2弾。

 私はまだ、豊饒の海に関してあと2作を残しているが、なるほど、これを読めば、三島が、どうして死なねばならなかったのか、死してまで何を伝えようとしたのかが分かる一冊になっている。

 自死が美しい行為であった時代、切腹が意味を成した時代に三島は生きたかったのだと思う。その気持ちをこの一冊に乗せたからこそ、もう彼になすべき行為は残されていなかったのだろう。

 純粋に話の筋を追うのはそれはそれで楽しいが、この物語を読み終えたとき、時代を感じずにはいられないし、ここまで突き詰めて生きているかを問われているようで、胸が苦しくなった。

 仏教、陽明学、武士道、三島の考えるそれらのエッセンスががこの一冊に詰まっている。不勉強な自分でも、それぞれを学問としてこういうものだよ、と三島が丁寧に教えてくれる。ああ、こういう人が先生だったら、勉強も苦にならなかったのかもしれないとも我が身を振り返ってみて嘆くしかない。よい師に出会うことは人生の中で重要なウエイトを占めるのだろうな、とも。

 戦前の我が国がどういう世相であったかを知るにも、うってつけの一冊だろう。