【読書】アラスカ物語/新田次郎
日本人移民フランク安田が、没落した家を飛び出しエスキモーと交流を温め、定住し、金鉱を掘り当て、エスキモーの妻を娶り、遂には開拓者として村を導き、餓えから救う。
彼には帰国のチャンスがあったのだが、一度も本土の地を踏むことは叶わなかった。愛するエスキモーの家庭が築かれていたからだ。
悲しくも、一途に生きた男は死を目前にして、これでよかったのだと生涯を振り返る。運命を全うした人生は豊かだ。
山以外の新田次郎作品をはじめて読んだが、厳しい自然を相手にする山の作品に相通ずるものがある。この作品はそれがアラスカの極寒である。しかし、新田作品は自然はあくまでも背景であり、従であり、引き立て役に過ぎない。人間ドラマの展開と妙が主役であるからこそ、面白いのだろう。