谷中ハチ助のブログ

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【読書No.60】てっぺん 我が妻・田部井淳子の生き方/田部井政伸

妻は妻、夫は夫。理想の夫婦像がここにある。

 


妻・田部井淳子は人類史上女性初のエベレスト登頂を成し遂げた傑物である。縁があって、生前の彼女を目の当たりにしたことがある。本書で評されるように、傍目はどこにでもいるおばさんだった。オーラなんてなかったし、気さくに話していた。でも、それが彼女の魅力なのだ。登山好きが高じて、周囲を巻き込み、あれよあれよと偉業を達成してしまう。分け隔てない物腰、人を調子に乗せるムード、チームプレイのクライミングに必要な性格を彼女は持っていた。

 


本書は夫であり、同志であり、若かりしときは本邦のトップクライマーであった政伸が淳子と山で出会い、足指を切断し、留守を預かって妻を応援しつつも、自らもバイクや機械いじりなど、好きなことをとおして自分らしく生き抜いた、夫婦の記録である。

 


著作の過半は、夫婦が実際に国境を越えてやりとりした往復書簡で成立している。家のこと、子どものこと、互いが思いやり、信頼しきっていたことがよくわかる。だからこその、好き勝手であり、偉業だった。夫婦とは、かくありたい。f:id:yanakahachisuke:20190108181528j:image