谷中ハチ助のブログ

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【読書No.65】私が食べた本/村田沙耶香

 

 

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作者らしいタイトルのつけ方だなと感心した。食べるが如く、地肉になっている。そんな気がした。

 

村田沙耶香の書評集が出たばかりだと知って、急ぎ本書を入手した。

 

やっぱりというべき、偏愛ぶりである。山田詠美川上弘美らのちょっと変わった仕立てになっている作品が選ばれている。彼女はこれらの作品の気に入った一節を紙に書き出したり、音読したりして反芻し、食べもののように消化してしまうことも多々あったようだ。著作に垣間見える、登場人物の拘りの強さや、執着はこんなところにつながっているのかもしれない。

 

そうして、書評も、作品同様読ませる、読者を惹きつける内容に仕上がっている。うまいのである。

 

本作の三分の一はエッセーが収められている。作家を目指す動機や、どのようにして思春期を過ごしたか、芥川賞を受賞した後の想いなど、彼女の来し方、日常が綴られ、ファンにはたまらない一冊になっている。

 

彼女は7歳の頃から、受験期を除いて創作に打ち込んできて、そのストイックさは脱帽するしかない。執筆への情熱の炎がメラメラと燃え上がっているようだ。物心ついたときから、生活の中心にいつも文学があったのだ。

 

ここに紹介されたまだ見ぬ作品のいくつかは、読みたくなる磁力が強く感ぜられた。引き摺られるように、それらの作品を読み耽ってみようと思う。