【読書】 日はまた昇る The Sun Also Rises/アーネスト ヘミングウェイ Ernest Hemingway
この作品は、一般的には、男女の愛と友情を描いたとされているが、私が最も印象をいだいたのはモチーフとして取り上げられている闘牛と釣りだ。ヘミングウェイの執着がいかほど深いかをこの作品を読んで知ることになる。
前半は主人公がヒロインと巡り会った道程と、友人達も彼同様、第一時世界大戦後の喪失感に個人的な事情もあって苛まれる様子が、世相を反映して混沌ぶりが伝わってくる。理解が追いつかず正直言って面白味には欠けるところもあった。
が、後半、彼らはスペイン、サンフェルミン祭の闘牛を観に揃って旅立つ。一週間にもわたる狂騒で、彼らははっちゃけ、ヒロインに振り回されまくる。闘牛士とヒロインの駆け落ちで作品は最高潮を迎える。そこで、前半の伏線が丁重にも敷かれていたことを悟る。
私には、それ以上に主人公は闘牛への傾倒ぶりが目を見開かされるものがあった。闘牛を何一つ知らない素人にも、手順や型式、様式の意味するところの一つひとつを詳らかにしてくれる。スペインには行ったことがないが、この本は私にとって闘牛入門書であって、一度は観たくなる。その気にさせるトリガーになった。
ヘミングウェイは本作で取り上げた闘牛場に9回も足を運んだというから相当な入れ込みだ。この闘牛場の前はヘミングウェイ通りと名付けられているというから、相思相愛だったのだろう。