【読書 Reading】暁の寺 豊穣の海・3/三島由紀夫
弁護士として地位も名誉も金も手に入れた本多は、前作、前前作で登場した亡き親友き松枝の生まれ変わりと信じるタイの王女ジンジャンと運命的な出会いを果たす。本多は機あるごとに王女との偶然を装った邂逅を試みるが、ままならない。
世間的には名士と認識されるような傑物であったとしても、欲望はつきまとい、決して逃れることはできない。
流麗な文章の中に、残忍なまでに人間の卑小さが凝縮されている。これから先もそうなのか、と自らの老いゆく先を想像するに暗澹たる気持ちになると同時に、衰え知らずもありうべし、などとほのかな希望をいだいりもした。
三島はきっと、老いてもなおを醜いとして、潔しとしなかったのではないか。そう思ってしまった。