谷中ハチ助のブログ

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【読書No.56】 こんな夜更けにバナナかよ/原案 渡辺 一史

進行性の病、筋ジストロフィーの患者が、食べたいものを食べ、読みたい新聞を読み、好きな異性とデートする、そうしたごく当たり前の欲求を追求した、実話に基づくお話。

 


本邦において、障がい者をとりまく環境は厳しい。乙武さんの例を挙げるまでもなく、自分の親が、そしていつかは自分が老いて体の自由が利かなくなったとき、果たして、今あるいは若かりし頃と同じように動けなくなったとき、他人の助けを容易に借りられようか?私もそうだが、日本人ならきっと遠慮が先だってしまう。

 


本書はかなり深刻な状況に置かれた主人公が、大上段に構えるでもなく、ただそうしたいから、障がい者だから我慢するのってなくない?と、素朴にも、衣食住の欲求を追求した帰結が描かれている。

 


恐らく、第一印象として、ふだん福祉に諦めや、ある種の壁を感じているような私みたいなウブな読者には、主人公の振る舞いはワガママにも思えるだろう。しかし、読む進めていくと、主人公の希望を叶えようとするボランティアたちに訪れるある種のハイな心境に近い感覚を、読中に宿すのではあるまいか。

 


読んで、さあ行動だ、とまではいかないけれども、障がい者への理解は確実に進むだろう。そう確信させる作品だった。

 


ストーリーからして、大泉洋主演、高畑充希を中心に据えた映画はハマり役ではないか。機会があれば、ロードショーを観てみたくなった。f:id:yanakahachisuke:20181227181018j:image