谷中ハチ助のブログ

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【読書】楽園のカンヴァス/原田マハ

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美術鑑賞を嗜むなら原田マハさんは外せない。先輩や友人に何度も勧められておきながら、ためらっていた。今回、ようやく重い腰を上げて本書を手に取り、ああ、もっと早く手に取れば良かったと後悔しているところだ。

 

物語は大原美術館の監視員、早川織絵が同館に閲覧に訪れた学生のマナーを注意するところから始まる。

 

織絵は遠い過去、アンリ・ルソー研究に成果を上げた気鋭の研究者として躍動した経歴がある。同じ頃ルソー研究に血道を上げていたニューヨーク近代美術館のアシスタントキュレーター、ティム・ブラウンとひょんなことからバーゼルにおいて、ルソー作品の真贋鑑定を争うことになる。

 

 鑑定が主眼のストーリーだが、そこには作品をめぐる様々な人々の思惑が絡み、二人を大きく揺さぶっていく。並行して語られるルソーとピカソの物語が、二人の命運を握り、20世紀と21世紀を行き来するような錯覚にとらわれる。

 

著作にはいろんな見方があると思うが、私は織絵にしろ、ティムにしろ、作中の登場人物に自身を投影し、一緒に泣き笑いするのが良いと思う。それが、一番の楽しみ方であるし、己を知らない世界に導いてくれる作品の優れた点と確信するからだ。