谷中ハチ助のブログ

登山、読書、ベイスターズ情報を谷中からお届けします

【ゴッホ展】上野の森美術館

f:id:yanakahachisuke:20191014195856j:image

 

連休最終日の冷たい雨がふるさ中、上野の森美術館には長蛇の列ができようとしていた。9時半の開門からまもなく、入場15分待ちの札が上がる。想定内といえば想定内。逸る気持ちを抑え、心穏やかに入場ゲートをくぐった。

 

展示は地味な印象から始まった。リトグラフ、水彩、チョーク。およそゴッホのイメージとはかけ離れたオランダでの日々。ハーグ派と親交のあったゴッホは、才知ある彼らを学び、模倣することで基礎を築いていったらしい。今回はそれら親交のあったイスラエルスやマウフェらの作品を展示していたので、初期のゴッホがどのような作品から影響を受けていたかがよくわかった。

 

次に、農民画家として。この時期のゴッホはじゃがいもを食べる人々、や農夫あるいは農婦など、まさに農に働く人々の中にいたのだ。

 

そして、印象派。ルノワール、モネ、私のお気に入り新印象派のシニャックやピサロまで。パリでこれらの作品に触れ、画家たちと親交を温めたゴッホは、私達の知るゴッホとして開花していく。今回の展示のみどころである「糸杉」や「薔薇」は「ひまわり」同様うねるような線の力強さと夥しい光りをまとった究極のなにかだ。そのなにかが、人々の、日本人の心を捉えて離さない。

 

展示作品数は83点と多くはないが、ゴッホがどのような生涯を歩み、友人たちとの交わりの中から己の作風を見出していったかが、よく分かる展示になっている。

 

このような展示を日本で見られるのは素晴らしいの一言に尽きるし、感謝しかないが、いかんせん鑑賞環境がよろしくない。上野の森美術館は初めて行ったが、ここは美術鑑賞にはふさわしいとは言い難い。当然写真も撮れない。パリやニューヨークなど、美術の本場に行ったことのある人ならばありえないような満員電車の如き密着した環境。そこだけはなんとかならぬものかといつも思ってしまう。おそらく平日に鑑賞したとしても、絶対的にハコのサイズが狭いためどうにもならない。東京ドームでも貸し切ってやってほしい。それくらい思い切った改革が必要だと思う。

 

f:id:yanakahachisuke:20191014195958j:image