【読書】La Peste ペスト/Albert Camus アルバートカミュ
辛く長い疫病との戦い。作品の9割が不条理で埋め尽くされている。
終盤、病の終息が見通されるが、そんな中でも人は次々と亡くなっていく。
亡くなっていく人たちに選別はない。富めるものも、貧しいものも、男も女も、青年も、老人も、子どもも、生を与奪される。そこには、信仰の意味合いなど、為すすべもないかのようだ。
人間、奪われてばかりだと、希望を見出せず、惰性に流される。マジメに生きようが、その日暮らしだろうが、生きる意味を見出せなくなる。
大切な人を奪われ続けても、主人公は医師としての役割を全うし続ける。そこには、生きる喜びよりなどなく、悲壮感が漂う。
人生は不条理だらけだ。自分を律するのは、結局自分以外にはありえない。飢えや搾取からある程度逃れられる現代においては、それを心に刻みつけていきるしかない。重心をどこに置くかの自由だけは、ほとんどの人が持っている。
迂遠で複雑、巧みな修飾の先には、当たり前すぎる結論がある。おそらく、敬虔深い信者だって、容易には反論できないだろう。