【イタリア紀行】ティレニア海の夜景/アマルフィ
月明かりが水面を照らし、たゆたう波が呼応していた。沖に停泊する帆船は穂先を傾け、まるで月を伺うように寄り添う。街明かりがそっと夜の帳に降りてきて、まるで夜を覗くように密閉した光を灯す。
あんなの造りもの、空想上だろう。スラーをはじめとした点描派が画き出す、風景の妙は出来すぎている、ファンながら訝しく思っていた。
しかし、それは私の認識違いであったと訂正しなければならない。今夜ここにその精緻が眼前に広がっていたからだ。
レストランを抜け、昼間は海水浴客で賑わった浜辺に腰を下ろし、ああなんて素敵なんだろうと、しばらくただ眺めることしかできなかった。