【読書】金魚姫/荻原浩
哀愁漂う。荻原作品に通底する図太い骨格はこれだろう。
この作品は中でも哀れを誘う。
朝起きると水浸しの床、夜ごとひたひたする妙な足音。果たしてその正体やいかに。
主人公は琉金を買い始めて様々な不思議な現象に突き当たる。見えないはず死者が見えるようになり、営業成績はうなぎのぼりで上司からも一目置かれるようになる。
その道程が巧みで、不自然さがつゆともない。時に引用される古い書物からの解説が、警句じみたスパイスを利かせ、物語をいっそう引き立たせる。
ほのぼのとして、ちょっと泣ける荻原作品の真骨頂をここに見た気がする。