【読書No.66】店長がいっぱい/山本幸久
カウンター越しに丼物を客に提供する店長。
表紙どおりそこかしこのチェーン店で展開される風景を想像しつつ、手に取ると、そこには店長たちの苦悩と喜びと、人間ドラマに満ち溢れた連作が繰り広げられていた。
女手一つで創業し他人丼を全国展開させた会長、頼りなく自己中に育った2代目、事業拡大にまっしぐらな美人本部員。どれも、味のある人物像が結ばれて、個性と個性がぶつかっていく。
登場人物の数だけ思いがあり、一晩では語り尽くせぬ深い事情がある。それらを丹念に描いて、読ませる。それは、様々な具材が一体となって、切られ、炒められ、炙られ、調味され、最後にメシに乗せられて完成する一杯の丼物のようだ。
北は北海道、南は赤道直下の島にまで友友丼を食べにくる動機、店を訪れる腹づもりは異なっていて、丼一杯で、世界はここまで広がるのかと、著者の構想の広がりにへーを言いたくなる。
書店に並んでいた見ず知らずの本を軽い気持ちで手に取ったら、まんまと嵌められた。爽快な読後感。いい意味での裏切りにあったようだ。
丼物チェーン店へGO!
|