【2018読書No.52】天人五衰(豊饒の海第4巻)/三島由紀夫
思い至ったのは、人生の虚しさだ。煩悶し、苦悩し、追い求め、老いて人生の終局に辿り着き、やっとのことで巡り会えた。が、他人にとってはなんのことはない、羽のように軽く反転してしまった。
この作品から推察するに、きっと三島は、自決にさしあたって、他人が自分を十全に理解しきることはないことを分かり切っていたのだ。それゆえ、悔いはなかったのではないか。
すべてが相対化されるなら、生きる意味や意義を考えるまでもない。自分が存在するのは、誰のためでもない、自分の独りよがりに過ぎないのだ。それを分かった上で、生きてみろ。三島がそう語りかけてくれているようだった。