谷中ハチ助のブログ

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【読書】春の雪(豊饒の海①)/三島由紀夫

 三島の遺作、豊饒の海シリーズの序章を読みました。遺作、しかも問題作ということで、ファンとしていつかは読まなければならないと思っていたところ、book bar(前回の投稿をご参照ください)でも取り上げられたので、これは今読むべしということだろうとプレッシャーを受け、手に取ってしまった感じです。

 

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 予想はしていたのですが、遅々として読書が捗りませんでした。なんというか、他の作家の作品の二倍くらいかかるのです。登場人物の個性や、取り上げられているテーマははっきりしているので読みやすいはずなのですが、大袈裟にいえば、作品に込められた熱量にこちらが気圧されてしまっていて、進めない、そんな状況でした。

 

 話は、大正時代の上流階級の青年が幼馴染と添い遂げることができず、相手は出家、青年は・・・というストーリーです。若者が素直に生きるのが難しいのは今も昔も自分自身に照らし合わせても納得がいくのですが、どのような時代背景、個々人の属性があっても、時代を超えても普遍的な人間の内面の葛藤はいつの時代も同じであり、それに鋭く迫った作品だと、噛み締めるようにして読み切りました。

 

 三島作品は、日本語の美しさ、多様さに毎回圧倒されるのですが、今回はそれに加えて、凄味というか、このシリーズが遺作と聞かされて、なにがということは断定できませんが、これ以上の作品は書かないし書けないという覚悟のようなものが伝わってきました。あとの3作品を読むには、こちらも心しなければならないので、ちょっと時間を置いてからチャレンジしてみたいと思っています。