谷中ハチ助のブログ

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【読書No.80】流/東山彰良

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台湾在住の友人からこの本を紹介され、手にとった。なるほど、面白い。

 

台湾、日本、中国本土。共産党と国民党の間で揺れ動いた、「中国人」の家族の物語である。

 

台湾にいればこそ、その喧騒、舌で味わう料理、靄を含んだ亜熱帯の空気、常に大陸を意識せざるを得ない政治、生殺与奪の歴史。

 

忘れがちだが、衣食住が事足りている世界の一握りの人々を除いて、生きていくためには、食べていくためには何をなすべきかを考えざるを得ない。そうした人々にとって、共産党が、国民党がどのような政策をを掲げようとも、おまんまを多く与えてくれる方になびいていった。そのようにして、生き残った主題が、歴史として上書きされていくものなのだ。

 

他所もそうだが、訪ねたことのある現地には、雨が土壌に染み込むように、必ずや土地への既視感、幾ばくの愛着が生まれる。であれば、踏み跡をつけた実地を取り上げた作品には必ず、なにがしかの傾倒があって当然なのだ。

 

私は2度台湾を訪れた。他に2度足を踏み入れた異国の地はない。それだけ、台湾は気軽に訪れることのできる地であり、馴染みがあり、そして幾ばくかの愛着がある。ましてや何年にも渡って、彼の地で頑張る友人には、根を張って育つ木々のように、揺るぎない信念のような思いが脈々と流れているのだろう。

 

友人の平穏無事と一層の活躍を思わざるを得なかった。