谷中ハチ助のブログ

登山、読書、ベイスターズ情報を谷中からお届けします

【読書】我らが少女A/髙村薫

f:id:yanakahachisuke:20191001235542j:image

 

髙村薫さん最新作にして、警察モノの最高峰。

 

本書はハードカバー500ページを越える超大作で、約一年間毎日新聞に連載された。

警察モノいうと血なまぐさい殺しのシーンだとか、諍いや怨恨といったマイナスイメージが想起されるが、高村作品はショッキングな描写などはほとんどなく、朴訥、実直なまでに登場人物の内心を描き切るところに真骨頂がある。

 

作者も御年66であるが、作者と並走するかのように、主人公の合田刑事もあの事件から12年の時を経て、57歳になっている。作者にせよ、主人公にせよ、心境の変化著しいが、本作はデジタルの隆盛やテレビゲームの定着が大人ひいては刑事や判事にまでもに、趣味として娯楽として、そして思考回路にまで多大な影響を与えている世界のあり方をよくもまあというくらい丹念に追っている。

 

この作品の主人公はもちろん人であることには違いないのだが、もう一つ上げるとすれば、テレビゲームやビデオゲームと、スマートフォンといった現代人には欠かすことのできない存在になりつつあるそれらが、あたかも、主体性を持つかのように人々の生活の奥深くまで浸透していることだ。

 

作者はいわば慣れ親しんだアナログのそれらに綺麗サッパリおさらばして、新時代へ安時代へ身を投じ、まるでそちらが最初からホームであったかのように違和感なく振る舞っている。

 

この転身ぶりに私は目を見開かれる思いで読み進めた。自分はもう時代遅れにならんとしているのではないかと。作者よりも若いのにと戒めながら、今更ながら、時代にキャッチアップしていくことを現代人に課された使命と改めて肝に銘じた。