【2018読書No.54】 夏の闇/開高健
初めて開高作品を手に取った。噂はかねがねだったので、ハードボイルドなのだろう、硬質なのだろうと、構えてしまったが、まったくそんなことはなかった。
ベトナム戦争を現地で体感した記者経験が生きている。けれども、本書ではそれを間接的にしか、触れることができない。恐らく意図してこのようなスタイルをとったのだろうが、背景を知っていなければ、なにゆえ、ベトナムで倦むような日本人男女の付かず離れずが繰り返し描写されるか、理解できなかったように思う。
ひしひしと迫ってくるというより、じわじわ染み込んでくるような読後感は、もはや本作が同時代に存在せず、古典たりえているからではなかろうか。アプローチの異なった開高作品を読んで考えてみたくなった。