谷中ハチ助のブログ

登山、読書、ベイスターズ情報を谷中からお届けします

読書

【読書No.65】私が食べた本/村田沙耶香

作者らしいタイトルのつけ方だなと感心した。食べるが如く、地肉になっている。そんな気がした。 村田沙耶香の書評集が出たばかりだと知って、急ぎ本書を入手した。 やっぱりというべき、偏愛ぶりである。山田詠美、川上弘美らのちょっと変わった仕立てにな…

【読書No.64】 1R1分34秒/町屋良平

ボクシングを観るどれだけの人が、チャンピオンでもないその他大勢のふつうのボクサーを知っているだろう。 業界人やその周辺に身に置く立場になければ、その生態は知るきっかけは少ない。本書は、将来を嘱望されているわけでもない、しかし、ボクシング以外…

【読書No.63】 凍/沢木耕太郎

読中から、寒気がする。震えが止まらない。 タイトルどおり、凍える内容だった。 エベレストに連なる山々を登攀する、日本を、いや世界を代表する夫婦の物語。 寒さに凍え、餓えに耐え、次第に効かなくなる身体の自由。それでも2人は頂上を、生還を諦めなか…

【読書No.62】女生徒/太宰治

女性の気持ち、が少しはわかるようになったかもしれない。 人間失格、が苦手だった。九州の実家には読みさしのそれが確か4冊あった。忘れた頃に断念したことすら忘れていたが、合わないのに固執していたのだ。でも結局は投げ出した。 今回、因縁ある太宰治作…

【読書No.61】 神々の山嶺(上・下)/夢枕獏

熱くなった。痺れた。上下巻1,200ページにも及ぶ長大なエヴェレストの頂きを目指す物語を一気呵成に読んでしまった。 いわゆる山岳小説推しのレビューを雑観すると、大抵本書が五指に数えられている。納得だ。 最初に世界最高峰に登頂した証拠としてカメラの…

【初めてのメルカリ】

初体験はいつだってドキドキする。 恥ずかしながら、今頃になってメルカリを始めた。新しい年の始めに、新しいことを始められて、なんだか幸先よい。 1 写真に撮る 2 アプリを立ち上げる 3 値段をつけ、簡単な説明をつける 4 アップする たったこれだけでい…

【読書No.60】てっぺん 我が妻・田部井淳子の生き方/田部井政伸

妻は妻、夫は夫。理想の夫婦像がここにある。 妻・田部井淳子は人類史上女性初のエベレスト登頂を成し遂げた傑物である。縁があって、生前の彼女を目の当たりにしたことがある。本書で評されるように、傍目はどこにでもいるおばさんだった。オーラなんてなか…

【読書No.59】 風立ちぬ・美しい村/堀辰雄

ジブリが映像化するにあたり、宮崎駿監督がモチーフにしたとされる原作を読んでみた。 難解だった。深刻な闘病と、つきっきりになる小説家。日記調の文面からは切迫感がなかなか掴めず、淡々としたタッチからは感情移入がそうたやすくできない。 原因を考え…

【読書No.58】 青春を山に賭けて/植村直己

恥ずかしながら植村直己の偉業を正確に理解していなかった。世界初の五大陸最高峰登頂、アマゾン川単独筏下りなど、数々の輝かしい冒険を成し遂げている。本書は、その前半録ともいえる、山との出会いから、グランドジョラス氷壁登頂までを収めている。 本人…

【今年の目標】ブログの毎日更新

旧年中はお世話になりました。 昨年は50回の登山と100冊の読書を掲げましたが、結果は登山は37回、読書は70冊くらいでした。本年もこの2つは適度にやっていき、その分アウトプット中心に回していきたいと思っています。発信し続けることで少しでも活動の幅…

【読書No.57】 学びを結果に変えるアウトプット大全/樺沢紫苑

衝撃を受けた! ◯インプット:アウトプット=3:7 ◯インプット 読む、見る ◯アウトプット 書く、話す、行動する ◯アウトプットしないと記憶が定着しない ◯インプット、アウトプットの仕方満載 ◯2週間で3回やれば記憶に定着する 全くできていないのだ。 私は…

【読書No.56】 こんな夜更けにバナナかよ/原案 渡辺 一史

進行性の病、筋ジストロフィーの患者が、食べたいものを食べ、読みたい新聞を読み、好きな異性とデートする、そうしたごく当たり前の欲求を追求した、実話に基づくお話。 本邦において、障がい者をとりまく環境は厳しい。乙武さんの例を挙げるまでもなく、自…

【読書No.55】 日本ペンクラブ名スピーチ集/浅田次郎ほか

世界各国にペンクラブなる団体がある。作家、編集者、詩人…言論の自由、表現の自由、国際的連帯を標榜している。 日本のペンクラブ代表は吉岡忍。本書は2007年に前代表の浅田次郎が、米原万里、椎名誠、井上ひさし、立松和平、辻井喬、阿刀田高、高樹のぶ子…

【2018読書No.54】 夏の闇/開高健

初めて開高作品を手に取った。噂はかねがねだったので、ハードボイルドなのだろう、硬質なのだろうと、構えてしまったが、まったくそんなことはなかった。 ベトナム戦争を現地で体感した記者経験が生きている。けれども、本書ではそれを間接的にしか、触れる…

【2018読書No.53】お菓子とビール CAKES AND ALE /サマセット モーム Somerset Maugham

階級社会は理解し難い。それよりももっと理解し難いのが、本書のメインテーマの夫婦関係だろう。夫はいろんな商売に手を出しては失敗し、妻は町中の誰とでも関係をもってしまうような奔放さ。夫婦はある日夜逃げしてしまうが、主人公は幼い頃、分け隔てなく…

【2018読書No.52】天人五衰(豊饒の海第4巻)/三島由紀夫

三島由紀夫の遺作であり、豊饒の海の完結編である。 思い至ったのは、人生の虚しさだ。煩悶し、苦悩し、追い求め、老いて人生の終局に辿り着き、やっとのことで巡り会えた。が、他人にとってはなんのことはない、羽のように軽く反転してしまった。 この作品…

【読書 reading】剃刀の刃(上・下)The Raser's Edge /サマセット モーム Somerset Maugham

旧友の死をきっかけに人生とは何か、若き主人公は追い求め始める。大陸から、インド、アメリカへと舞台は展開する。あまりの超然ぶりに女は諦め、別の男を選ぶ。 神と信仰、人生における優先順位はひとそれぞれだ。登場人物各自が全く違った道を歩む。みんな…

【読書 readin】La fille de Brooklin ブルックリンの少女 /Guillaume Musso ギョーム ミュッソ

フランスでベストセラーのミステリー。 日本のそれにはないソフトタッチ。しかし、息もつかせぬ展開。フランス、アメリカを行き来し、ドナルド・トランプまで!時事ネタもふんだんに盛り込んでいて、ありそうかもと思わせるストーリーと、仕掛けがふんだんに…

【読書 reading】ペインレス(上・下)/天童荒太

精神的な痛みを生まれつき持たない女医が、後天的に肉体的な痛みを感じなくなった男を診察する。そこからふたりの関係は変化し続ける。 人間という主体があって、痛みを感じること、これを避けることが当然の前提となっている世界を、むしろ痛みが主体で、人…

【読書 reading】アイム・ファイン! i'm fine!/浅田 次郎 Jiro Asada

私が、JALに乗るときの最大の愉しみは機内誌「SKY WORD」で連載中の浅田次郎のエッセイを読むことである。 本作はそのエッセイをまとめた第2巻であり、最新作は4作目が絶賛発売中である。 ... 浅田次郎は愉しい人である。ユーモラスである。自らのハゲ…

【読書 reading】BUTTER/柚木麻子

バターの話である。 断っておくが、空腹時に読まない方がいい。自然、唾が口中に溜まり、食欲を増進する。私は帰りがけに電車中で読書するのが常だが、本書を読破した数日間、モノを口に入れずに家に辿り着くことができず、駅から降りて思い当たるレストラン…

【読書 Reading】暁の寺 豊穣の海・3/三島由紀夫

弁護士として地位も名誉も金も手に入れた本多は、前作、前前作で登場した亡き親友き松枝の生まれ変わりと信じるタイの王女ジンジャンと運命的な出会いを果たす。本多は機あるごとに王女との偶然を装った邂逅を試みるが、ままならない。 世間的には名士と認識…

【読書 Reading】カモメのジョナサンJonathan Livingston Seagull/リチャード バック Richard Bach

可能性を信じ、想像力を逞しくさせてくれる。たかがカモメ、されどカモメ。シンプルだから、わかりやすい。高く、遠く、飛ぶか飛ばないか。そのために己を信じるか、信じないか。これが人間を題材にしたら、同調性がどうのこうのとか、易きに流れるとか、批…

【読書】A GOOD YEAR プロヴァンスの贈りもの/Peter Mayle ピーター メイル

ロンドンのシティでバリバリの金融マンだった男が、クビになり途方に暮れる。そこに何十年も会っていなかった叔父が亡くなり、唯一の相続人である手紙が届く。 叔父はプロヴァンスに広大な葡萄畑と醸造所、所謂châteauをもっていた。 憧れだけでとびこんだ主…

【読書】La Peste ペスト/Albert Camus アルバートカミュ

辛く長い疫病との戦い。作品の9割が不条理で埋め尽くされている。 終盤、病の終息が見通されるが、そんな中でも人は次々と亡くなっていく。 亡くなっていく人たちに選別はない。富めるものも、貧しいものも、男も女も、青年も、老人も、子どもも、生を与奪さ…

【読書】 日はまた昇る The Sun Also Rises/アーネスト ヘミングウェイ Ernest Hemingway

この作品は、一般的には、男女の愛と友情を描いたとされているが、私が最も印象をいだいたのはモチーフとして取り上げられている闘牛と釣りだ。ヘミングウェイの執着がいかほど深いかをこの作品を読んで知ることになる。 前半は主人公がヒロインと巡り会った…

【読書】一瞬の風になれ 全3巻/佐藤多佳子

いわゆる陸上部の青春モノ。主人公は中学校までのサッカーキャリアに区切りをつけ、神奈川県の公立高校で、一旦は走ることを止めた幼なじみを誘い、短距離走にのめり込んで行く。温かい先輩、お茶目でたまに厳しい過去に拗ね傷もつ顧問、ギラつくライバル校…

【読書】月と六ペンスThe Moon and Sixpence/サマセット モームWilliam Somerset Maugham

狂ってる。そういう見方もあると思う。40代のある日、妻子と安定した収入をかなぐり捨て、絵を描くことにすべてを投げ出すことにした男の尊大な半生。でも主人公は幸せだっただろう、多くの読者が肯定的な感想を抱くに違いない。少なくとも私はそうだった。…

【読書】香水~ある人殺しの物語Das Parfum – Die Geschichte eines Mörders/パトリック ジュースキント (Patrick S¨uskind)

タイトルの殺人のイメージからは大きく裏切られた。しかし、それは私にとっていい意味での裏切りだった。本書は予めそうした狙いがあるように感じた。そして、まんまと作者の思いどおりに、導かれてしまったのだろう。 主人公は生まれつき私児として産み落と…

【読書】金魚姫/荻原浩

哀愁漂う。荻原作品に通底する図太い骨格はこれだろう。 この作品は中でも哀れを誘う。 物語はブラック企業に勤める若者が、縁日で立ち寄った珍しい品種の金魚・琉金を救ったことに端を発する。 朝起きると水浸しの床、夜ごとひたひたする妙な足音。果たして…